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隣り町とはいったら遠いだろうと予想していた割にはすぐついた。徒歩10分くらいの距離だった。
「サキこっち」
リラはなんだか楽しそうだった。
「気をつけないと転ぶぞ」
先の方に進んだリラに声をかけたとたん石につまづいて転んだ。
「いわんこっちゃない…」
「…ぶーぶー」
リラはふてくされていた。智史が近付きリラに手を差し延べた。
「よろしい…」
ふくれた顔に笑みがこぼれた。お尻についた砂をはたいて、リラは指をさした。
「あれだよ。田中勇夫の銅像」
見るからに小さかった。もう少し大きなモノかと思ったら、リラより小さかった。
「きた意味あったのかなぁ」
智史が呟くと
「ねぇ…サキこれなんて書いてあるの?」
それは田中勇夫の足元の石盤にかかれていた。
[人は誰しもが物語の主人公となれる。それは勇者であったり、勇者の敵であったりもする。
人の見方によっては善は悪となり悪は善ともなる。
善を受け継ぐ勇者よ。自分の勇気を探し求めよ。さすれば道は開かれる。
追伸:物語の主人公は誰にでもなれるのさ]
…何を伝えたいんだ。あの社長は…勇者となり、己の勇気を探す?そして道が開かれるって事は帰る術があるという事なのか?悪者がいないのにどうやって勇者になるんだよ。それに俺は物語の主人公ってより脇役だろ。
智史は途方にくれていた。
「サキ?」
リラは心配そうに智史を見つめた。
「…サキ!帰ろう!」
「ああ…」
リラが微笑んだ。
まずは一歩進めたんだ。これからの事考えなくちゃいけないよな。まぁ何より腹が減っては戦はできないってね。
家につくとトメさんがスープとパンを用意してくれた。自給自足で暮らしているからには智史も働らなくてはいけなかった。やった事ない事だらけだったが、生きていく為に智史はまず薪割りからやる事になった。
「明日から頼むよ」
「はいっ」
気合いいれて言ったはいいが、不安もあった。これができるのだろうかと
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