プロローグ

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  もう既に顔を隠そうとしている夕日を背に、私、尾崎貴美は歩いて居た。   右手にはスーパーの袋に二つ分の食材。左手には二歳になる娘、佐織が居る。   私はこれから帰ってやらなければならない家事の段取りを頭に浮かべ、気持ちばかり急いで居た。   と言うのも、左手に繋がれた小さな手の持ち主に歩調を合わせて居る為、思うようにかなり前から視界に入っているアパートに近付け無いで居たから。 先程から気持ちよさそうにお歌を歌っている彼女を急かすのも躊躇われたし、抱きかかえる気力も体力も、今の私には残って居なかった。
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