プロローグ

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かなりの時間をかけ、それでも何とかアパートの前に辿り着く。   「ちょっと待ってね?」   声をかけて繋いでいた手を離し、肩にかけていたバッグの中のキーケースを探った。 その間も佐織のお歌は途切れる事は無い。   中から確かに音はするのだが、キーケースらしき物が中々指に触れず、荷物と肩からずり落ちるバッグとも戦いながら、私はふとアパートの窓を見た。   明かりの付いていない、そのポッカリと暗い窓と目が合い、思わず動きを止める。   自分が付けなきゃ明かりは付かない。 そんな当たり前の事に心が疲れるのは何故だろう。
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