ロケット花火

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 団地内の公民館に侵入。といっても扉は堂々と開かれている。  夥(おびただ)しい数の蚊取線香はもちろん金鳥マーク。"よっ"と軽く挨拶を交わし、子供会が子供用に振る舞っている西瓜を志村食い。おっと塩を忘れてた。三度振りして再び志村食い。  会議机に並べられた麦茶の中から虫やゴミの浮いてないものを選び、口の中にへばりついた甘味をそいつで流し去る。最後はクチュクチュうがいとガラガラうがいでフィニッシュ。  埃っぽくて薄暗い階段を一段抜かしで一気に4階まで駆け上がり、ポケットの鍵を錠に捩じ込む。  ただいま。生きて無事帰ったよ ――― 誰もいない。いつものように。  台所へ行き、蛇口からダイレクトに飲水。勢いよく栓を開く ――― バックファイヤー、もといバックウォーター。  鼻の痛みに耐えながらベランダへ。祭りを見下ろす。  綿菓子のビニールをひん剥き、むしゃぶりつく。悲しい歯応えと顔面下半分に覚えるベタベタ感。  人の波の中にアイツを発見。狙いを定め、渾身の力を振り絞って投球。水ヨーヨーは重心の偏った物体が見せる独特な軌道を描き、ターゲットの足元付近で勢い悪くぺしゃっと破裂した。そう、ぺしゃっと。  アイツはこっちを見上げ、チキンの仕業と確信したジェスチャー。  誰かが放ったロケット花火 ――― 笛の音が団地の壁に谺(こだま)した。  明後日は夏至 ――― 夏が始まる。
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