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いつだってあの子は笑ってた。
あたしは、そんなあの子が好きだった。
いつもにこにこ笑っとる男の子、良ちゃん。
どんなに悲しいことがあっても、いっつもにこにこ笑うだけ。
「何で、怒ったり泣いたりしないん?」
そう聞いたらやっぱり良ちゃんは笑って言うた。
「泣いたり、怒ったりしたら、悲しくなる人が居るやろ?
そんなん嫌やから、笑っとるんよ。」
頭の弱いあたしは、意味も分からず、ただ「ふぅん」とだけ言うた。
「良ちゃんの言うことよぉわからんわ。」
「うーん、鈴にはちょぉ早すぎたなぁ」
そう言うてあたしの頭をぽんぽんと叩きながら笑う良ちゃんが、好きやった。
ある日、良ちゃんに大切な人が出来た。
こんなにも近くで想っとったのに、良ちゃんはあたしじゃない、もっと可愛らしい子を選んだんや。
「良かったなぁ、おめでとう」
「ありがとなぁ。」
あたしがこんな辛い想いしとるのに
良ちゃんはやっぱり笑って、あたしの頭をぽんぽんと叩いた。
辛くても良かったんや。
良ちゃんが幸せなら。
それなのに、神様は残酷や。
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