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すると、また着信。森内かな!? 画面も見ずに慌てて電話を取る。
「もしもし!」
「ミチーどこにいるのー」
しかし、電話の相手は泣き声混じりのカヨだった。
「カヨ」
また謝り倒されるのか、とうんざりしながら返事をする。
「約束した場所でずっと待ってます」
ショッピングモールのある駅の中央口、時計台下。ザアザア雨がレインブーツを濡らす。
「うそだあ! ……あっ」
はっきりと決めつけた言い方に、カチンときた。何か言いかけていたカヨを無視して、積もっていたイライラを、爆発させる。
「うそじゃない! 一時間も待ってるんだよ!? カヨはいっつも遅刻やドタキャンばっかりで、約束を全く守れないね! マジで友達いなくなるよ!?」
「……ミチ、カヨの友達じゃなくなるの?」
止まらなかった。
「そうかもね」
振り回されてばかりで、嫌になる。自分の思い通りになんて、これっぽっちもならない。
「ミチのバカ!」
「バカって、」
呆れてふうと息をつく。
――ん? 今、カヨの声が携帯電話以外から聞こえた気がする。
違和感を感じて顔をあげると、目の前にカヨがいた。
「カヨ……」
「約束、破ることたくさんあるけど、そんなこと言うなんてひどいよ!」
鮮やかなブルーに、シンプルな白い花柄模様が規則的に描かれた傘。カヨはその傘の中で、泣いていた。
「あたしだって一時間待った。中央口でずっと、待ってた」
カヨはそれだけ言うと、私に背を向けて走っていく。
「カヨ!」
ザアザア、雨は止まない。残された私は、携帯電話をぎゅっと握りしめた。
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