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「そっかあ」
のんびりとした返事。本当に、森内は変わらない。いいなあ、この雰囲気。柔らかな新芽のよう。
「でもどうして教えてくれたの?」
晴れ渡った空を見上げ、聞く。彼はついさっきまで、私にアドレスを渡されたことすら忘れていたのに。
「怖かったから」
「なにそれ」
意味がわからず吹き出す。さっきまでの私なら、怖いとは何よ、とまた怒っていたかもしれない。
「森内はいま、大学生なの?」
「うん」
「やっぱり、そうよね」
予想は当たった。私は窓に背を向け、寄りかかる。
「今度、ご飯でも食べようよ」
「うーん」
はっきりイエスと言わない森内を、私は押して押して、押した。
「ね!」
「う……うん」
しぶしぶながらも了承を得、私は小さくガッツポーズ。
「じゃあ来週の、」
水曜日に、と思っていたら、森内からはっきりとした言葉。
「日曜日」
「あ、うん。じゃあ日曜日に」
時間と待ち合わせ場所を決め、電話を切った。携帯電話を胸に抱き、ふーっと息を吐く。
――どうしてこんなに緊張したんだろう。
「ほっ」
ベッドに勢いよく倒れこみ、目をつむった。
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