退屈な日曜日

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   *  私は南口の改札前で待っていた。森内とご飯を食べるためだ。お昼ご飯、何を食べようかしっかりリサーチしてきた。一人暮らしを始めて一年たったけれど、この駅の周りは全然探索していなかった。大学の最寄りで遊ぶことばかりだった。  そういえば、森内とこの場所で会えたってことは、近くに住んでいるのかなあ? 母校まで、ここから片道二時間はかかる。実家から遠く離れた場所。もし近くに住んで無かったら、わざわざこの場所を待ち合わせに選んだのは失敗だったかも。  てか、このワンピース大丈夫かな!? 授業終わりにカヨと買い物に行って選んでもらったけど、本当に似合っているのかしら!  頭のなかをぐるぐる後悔が巡り、家に帰りたい衝動に駆られる。落ち着かなくて、携帯電話を開いたり閉じたりしていると、森内がゆっくりやってきた。  インディゴブルーのシャツに、ベージュのチノパン。シャツは襟だけ白くて、バイカラーな感じが可愛い。チノパンは少し裾を折っていて、半端丈から素足がのぞいている。靴はクロックスの黒いサンダルだけど、森内、おしゃれかも。  森内がやってきたのは駅の改札側でなく、並木道から。やっぱりこの辺りに住んでいるのかな? 森内はキョロキョロとゆっくりした動作で周りを見ている。ここは学生が多いためか、日曜日は人気が少ない。お昼の時間帯ならなおさらだ。 ――ここだよ。  私は森内の挙動を見守る。 ――ここだってば。  森内は一向に気づいてくれない。 ――あ。  目が合う。 「おー」  森内がだるそうに片手をあげる。私は小走りに森内に近づいた。
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