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「ちょっと、どういうこと?」
さあ家を出ようというとき、携帯電話が鳴った。嫌な予感はしたんだ。
「ごめんー、今日誘われちゃったんだもんー」
間延びした言い方、全然「ごめん」と思っていない。声だって、心なしか嬉しそう。
「ミチならわかってくれるよね?」
「カヨが友達より彼氏を選ぶことはわかった」
「ミーチー」
私は電話の向こう側に聞こえるよう、大きなため息をつく。
「埋め合わせ、してよね」
「もちろん! 愛してるっミチ!」
「はいはい」
プツッと電話が切れる。
「あんたが愛してるのは、あの優男でしょ」
もう、と玄関の扉にかけていた手を外す。
「……化粧までしたのに」
――休みの日はメイクしないって決めてるのに。
「はぁあ」
扉に頭をつけ、ぐっと心を決める。
――出かけてやる、楽しんでやる。
私は外へ飛び出した。
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