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――どこがで見たことのある、ほっそい体。
「森内……薫?」
街路樹に手を当て木を見上げる姿は、どう見ても高校時代の同級生だった。私は懐かしさに足を速める。
「久しぶり!」
よっと話しかける。しかし、彼は私の言葉を無視して木ばかり見ている。相変わらず、変な人なんだな。
「……何しているの?」
私も木を見る。しかしただの木で、変わったところはない。
「観察」
「木を?」
「子育て」
「子育て?」
意味が分からない。森内の見ている方向へ、目をこらした。
――鳥。
「わ、あれ?」
1匹の鳥が丸くなっている。ぷくーっと膨らんだ姿は、なんだか可愛らしい。
「あ……由良」
やっと私に気づいたのか、森内はびっくりした表情になる。
「遅いわよ」
私は苦笑いした。
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