退屈な日曜日

6/17
前へ
/17ページ
次へ
「あ、そうだ! 連絡先教えてよ!」  森内は色んな意味で気になる人だったから、あまり話したことが無かった。携帯電話も持ってなさそうだったし、連絡先貰っても取ることは無いなと思っていた。でもこんな道端で会ったのも何かの縁! 「ね!」  念押しする。 「うーん」  森内は面倒くさそうにポケットに手を入れた。ガサゴソ、ガサゴソ。一向に携帯電話は現れない。 「なによ、教えてくれないの?」  ちょっとイライラする。 「うーん」  間の抜けた返事。私とアドレス交換するのがそんなに嫌なのかしら! 「もういいわ」  意地になる。私はカバンから手帳を取り出し、メモ欄を破る。自分の電話番号とメールアドレスを書くと、森内に渡した。 「これ、私のアドレス。無くさないでよ」  普段なら諦めてまた今度ね、って言えるのに、森内はまた今度でもこんな風になる気がして。でも渡したあと、なんだか気恥ずかしくなる。私、なに必死に男のアドレスを手に入れようとしてるんだ、って。 「うん……ありがとう」  森内のぼそっとした声に顔をあげる。森内はにっこり微笑んでいた。 ――やっぱり顔は悪くない。  しみじみ、そんなことを思った。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加