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立ち上がり、障子を開けて縁側に出る。
そこからは広い庭が見渡せ、道場や倉が建っているのがわかる。
だが、いつもと様子が違った。
庭ににつかわしくない「もの」がある。
…アイツが立っていた。
校庭で戦闘を繰り広げていた、長い槍を持った大男であり、俺を殺した男。
「よぉ、元気そうだな。まさか一日に同じ奴を二回も殺すことになるとは、俺も思っちゃいなかったぜ」
ニヤリと笑う男。
俺は逃げ出していた。逃げきれるわけがないことは百も承知だったのだが、体が逃げろと叫ぶのだ。
この夢はあまりにもバカげている。目覚められない。
男は動くことなく、逃げる俺を見つめている。
倉の中に逃げ込む。が、バカな選択だった。自ら逃げ口を絶ってしまったのだ。
ペタリとその場に腰を下ろす。
「おいおい、余裕だな」
あの男の声。
後ろから聞こえる。
振り向く気にもなれない。
追い付かれることは分かっていたが、ここまでされると絶望するしかない。
「運が無かったな、小僧」
今ごろ、あの長い槍をふりかぶっているのだろう。もう覚悟を決めていた。
そして、槍が俺の背中にグサリ――――――とはいかなかった。
振り向くとあの男はいなかった。
代わりに、壁に大きく空いた穴と―――
―――鎧を着た、金髪の少女が立っていた。
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