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「さてと、覚悟は決めたか?」
黒い髪をショートにし、軽鎧に身を包んだ男、アルトが隣にたっている、背中まで伸ばした金髪に、蒼い瞳をした美しい女性、フィリスに声をかける。
「もちろん、この戦いに負けたら未来はないからね」
二人とも若く、まだ20代だがアルトは黒槍のリーダー、フィリスはエルドレイド軍の団長を務めていた。
フィリスは魔物の群れの奥を見つめる。視線の先には城、ルシフェルの住む魔城。
アルトは強気なフィリスを横目で見る。するとフィリスの手はカタカタと少し震えていた。
「心配するなって、俺が守るから」
そう言ってフィリスの手を握る。
「私の心配より自分の心配したら?」
手を握られて顔を少し赤らめたフィリスが笑いながら言う。
そして二人はそのまま見つめあった…
「リーダー、あまりいちゃつかないでくださいよ」
黒槍のメンバーの一人が冷やかしてきた。
「ばっ!馬鹿か!いちゃついてなんかない!」
あわてて手を離してフィリスから距離をとった。
黒槍のメンバー達が笑い声を上げる。
エルドレイド軍のほうからも少し笑い声が聞こえる。
「……今笑った人、戦いが終わったら私の所に来ること」
フィリスがそう言い放つと笑い声がピタリと止んだ。
その間アルトはメンバー達を締めていた。
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