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階段横の窓から庭が見えた。
紫陽花は暗い空で喜んでいる。
その優しく絶妙な色彩が格段に映えるから。
雨粒だって、紫陽花に絡まる宝石の一つ。
・・・よく探しなさい。
・・・よく見てみなさい。
その宝石の中に、魔法の力を宿した伝説の宝玉が隠れているわ・・・!!
見つけられるのは私しかいな・・・。
「ニラ、めっちゃはえてんな。ボーボーじゃんか。」
「・・・。家庭菜園の話なんかすんなや。」
「姉ちゃん、家庭菜園こそうちの食卓の基本じゃろ。今晩絶対ニラ玉。」
「ニラ玉かぁ・・・、っ!」
現実に巻き込まれるところだったぁ!!
ニラ玉なんか知らん!
知るか!!
そう、私は現実から逃げるんだから!!!!
私は階段を駆け上がると、自分の部屋に飛込んだ。
そこは、ピンクのカーテンに黒い薔薇のアクセント、壁一体にあしらわれたレースとアロマの甘い匂いで包まれた、・・・六畳の和室。
「あぁあ、馬鹿馬鹿し。」
そう。
私がものうげに起きた朝だって、前は婆さんがつかってたこの和室から始まったわけだ。
お姫様のお部屋では、けしてない。
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