ユメトゲンジツ

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薔薇柄のレースカーテンを閉めると、私はボリボリ尻を掻いた。 もちろん、グレーのスウェットから直接手を突っ込んで、ボリボリ掻いてますけど何か。 つか、このスウェット、破れてるって言われたなぁ・・・あ、膝のところかぁ・・・目立つかな・・・目立たんな・・・まだ着られるな。グシシ。 手早くスウェットを脱いだ。 畳の上に座りこんで、箪笥をあけ、物色、考察、チョイス! 白いブラウス、黒いミニのフレアスカート、お気に入りのコサージュは胸元に、この前買ったピアスはカバンのマスコットと合わせて、足元は、これも一緒に買った白い薔薇のレインブーツ、もちろん傘だってオソロイで・・・。 畳の上には、ところ狭しと服が並べられる。 部屋の上に飾ってある、婆さんの賞状が見守る中、私は可愛らしい人形に早変わり。 ほら、破れたスウェット着て安売りのパンを頬張っていようが、想像の世界より、私、可愛いじゃん!!! 階段を降りると、弟に出くわした。 「姉ちゃん、化けてどこ行くん?」 「ちょっと彼氏に謝ってくるわ!」 後ろで弟の笑い声と、跳ね返る水しぶきが、楽しそうに聞こえた。
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