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「謝りに来たよ。」
私は笑った。
彼は苦笑しながら、私を家にあげる。
『どんな格好をしてても、場所さえ間違わなけりゃええんちゃうか。どんな理想を持ってても、現実さえ取り違えなきゃええんちゃうか。』
夢見がちな私に、彼がくれた言葉。
年上だから出た言葉なのか、彼だから言えた言葉なのかは分からないけど、私を素晴らしい現実に引き寄せた言葉には違いなくって。
そう。
雨の中、私は誰にも呼ばれてないし、私は特別に選ばれたわけでもなし。
魔法なんてヘソで茶がわいちゃう。
オシャレでファンタジーな日常とはかけ離れた現実を、どっこい生きているわけ。
私は、現実の私を受け入れたんだ。
大昔に流行ったキャラクターの、しかもバッタもんのTシャツを着た彼に、私は後ろから抱きつく素振りをしながら、膝カックンをかましてやった。
彼のお陰で、現実は楽しい。
現実、面白い。
まあ、彼には言ってやらないけどね。
雨が降り続いていたのか、私はすでに知らなかった。
何故なら、唯一の魔法である『恋』に溺れているから。
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