そこに時間はあった

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僕は時間はあるけど金がない、しがない学生である。夏を直前に控え、梅雨も残りの力を存分に出している。ろうそくの火のように例えていい。ろうそくは最後に華々しく燃え、あとかたもなく散っていくのだ。 今日の雨はひどく華々しく思えた。 少し傷んだビニール傘を広げ、学校へ出かけた。 僕は学校から少し離れた場所に住んでいて、よほど暇でないかぎりは電車を使う。家から駅までは無論、徒歩で往復している。 電車は比較的ローカルで、車内は年季の入った何とも複雑な臭いがする。
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