第一章 小悪魔の抹殺

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       1 「では、最後に何か質問のある人?」 小さな教室で江崎久司は机に向かうゼミ生に問いかける。しかし、生徒達は答えない。その代わりシャーペンやファイルをカバンに仕舞い始める。質問なんか無いから早く終われということだろう…江崎はいつもの様に悟った。 「じゃあ、来週からは一人ずつ卒業論文のテーマをより細かく解説してもらう。まず次回は青木、頼むぞ。」 青木は愛想無く軽く頭を下げた。 「じゃあ今日は終わりだ、解散。」 江崎が言うと生徒達はまるで亡霊の様な声で口々に「ありがとうございました」と挨拶をする。だが慣れてしまった今はそう不愉快にもならなかった。 「じゃあ先生、さよなら。」 そんな中、明るい声で松山理沙が挨拶をした。無邪気に笑って手を振りながら、周りにわからない様にウインクをしてきた。 江崎はただ無愛想に「ああ、さようなら」と答えた。 彼女は江崎にとって癌の様な存在だった。 「いいの、あたし先生と結婚するから。」 無邪気に言うこの言葉が今も頭に残っていた。
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