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目覚ましの音で目が覚めた。
どうやらもう午前六時のようだ。
私は煩い時計のベルを止め、眼をこすりながら布団からゆっくりと起き上がり、施設に設備されている洗面所へ向かった。
私は日本記憶廃棄施設の管理人になって、もう何年もこの行動を繰り返している。
丸刈りの頭に顎鬚、細く少しタレた目に太い眉毛、ダンゴっ鼻に大きな口、それが私の顔だ。
歯を磨いて顔を洗い、タオルで水滴を拭い、布団の横に畳んで準備しておいた、真っ白い作業着に着替えた。
そして玄関に向かい、出入り口の鍵を開ける。
あとはドーム状になったこの施設の受付で、今日も来訪者が来るのを待つだけだ。
おっと、こんな朝早くにさっそく誰か来たようだ。
施設の入口がゆっくりと開けられ、受付に若い男がやってきた。
「あのーーえっと……」
男は茶髪にロン毛、耳にはピアス、腰ではいたジーパンに、よくわからない英語の単語をプリントされたシャツを着ていた。
私は、戸惑い気味の男に
「ようこそ、ここに名前を御記入ください」
と優しく言ってやった。
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