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それから探す事約一時間、赤石さんは未だに見つけられないでいる。
「何で無いんだろう……」
肩を落とす赤石さんに私は声をかけた。
「本当に棄てたのですか?」
私の方を振り向き
「あぁ…棄てたはずなんだ……」
と言った。
「ちなみに何を探しているのでしょうか?言いたくなければ別に言わなくていいですが」
「えっと……想い出を…」
想い出か。想い出はふとした事がキッカケで見つかる事がある。例えばその想い出に関係する物だ。それを見た時、それは居場所を知らせてくれる。
「記憶の欠片が残ってるかもしれませんね。自分の心をもう一度探してみてはいかがでしょうか?」
「そんな事言われても…」
「目を閉じて、少しでもいいのです。ここならそれが可能なのです」
赤石さんは言われるがまま目を閉じ、心の中を捜索し始めた。
「見えますか?」
「ん……わからない……けど、なんだろう、イメージが…」
すると突然赤石さんは目を見開いて
「…あっ!そうだ…!本……絵本だよ…!」
と叫び、記憶の山を見渡し、ある一点に目をつけ歩きだした。彼に助言できる事はもうない。彼は見つけたからだ、棄てた記憶を。
そして、赤石さんは一冊の絵本を手に取った。
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