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ジャックはシルヴィアの左横にいた。
小石で一瞬でも自分から注意を逸らし、ここまで潜り込む事に成功したのだが、ここからの攻撃手段は限られてしまう。
木の枝で攻撃するか。拳で殴り飛ばすか。蹴り飛ばすか。
ジャックは拳を強く握った。石よりも固く、固く握りしめる。
そしてシルヴィアの脇腹を狙って放たれたそれは、こちらを見もしない父親の左腕に防御される。
シルヴィアは腕に当たって威力が殺されたジャックの右拳をはじき飛ばすと、ようやくこちらに振り向く。
「殺気が出過ぎだ、馬鹿。そんなんじゃ、居場所を教えてるも同然だぞ?」
腕を弾かれて後方に体勢を崩しているジャックに、シルヴィアの凶剣が襲いかかる。
「くそっ!」
彼は後方にかかる力に逆らわず、そのまま後ろへと転がるように倒れる。
宙を切ったシルヴィアの剣の切っ先から紫色の毒々しい液体が飛び出した。
それは飛んでいくと木に触れた。途端に水蒸気のようなものを出しながら、木が溶けた。
「ふん。運の良い奴だ」
シルヴィアは一撃をかわされた事を残念がっている様子ではない。
むしろ嬉しいかのように、口元を吊り上げる。あんなの避けれて当然だと言わんばかりに。そんな表情を見たジャックの頭に血が上る。なんでこんな男に勝てないのだと。
城でなに不自由ない生活をしてきていた男に、サバイバル生活をしていた自分が勝てないのだと。
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