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地面に転がっている状態のジャックは、一気に立ち上がる。
足の裏に力を溜めて、爆発させる時を待つ。
シルヴィアが一歩、ジャックに近づいてきた。右手には猛毒の剣。左手はなにも持っていない。
ならば、突っ込む方向は最初から決まっている。
少年は足に溜めた力を爆発させる。高速でシルヴィアの懐に潜り込んだ彼は、左手で持っていた木の枝を、真上に投げ捨てる。
シルヴィアは一瞬だけ、そっちの方に気を取られていたが、ジャックが動く気配を感じたため、視線を即座に戻す。
ジャックはしゃがみ込んでいた。
右足を地面スレスレを滑らせるように動かし、シルヴィアの足を払う。
体勢を崩したシルヴィアが倒れこんでくる。
素早く立ちあがったジャックは、足を真上に振り上げ、そこから一気に振り下ろす。
固い靴のかかと部分が、シルヴィアの肋骨を粉砕しようと唸りをあげる。
が、しかし。
シルヴィアは地面に手を着くと、力を込めて横に方向転換する。
ジャックの足は地面を虚しく抉っただけに留まった。
「へー、やるじゃないか。ジャック。相当修行したようだな?」
シルヴィアの声はどこまでも余裕。今まで息子に攻められていたにも関わらず、その顔には汗一つ浮かんでいない。
対してジャックは、少々息切れを起こしていた。
シルヴィアが強い。こんなにも強かったのかと。考えていた。
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