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「なんだ。もう息切れを起こしているのかよ。若いくせに、だらしないねー」
「うるさい!」
ジャックが怒りに任せてシルヴィアへと向かう。
あの余裕に満ちている顔を、一発殴らないと絶対に気が済まない。
ジャックが突っ込んできているのを見ても、シルヴィアは表情を崩さない。
それどころか呆れたように溜息を吐く。
「何回も何回も。芸のない奴だな。突っ込むしか能がないのかよ」
ジャックが突き出してきた右のストレートを体を少し動かすだけで避けたシルヴィアは、ここで一気に攻勢へと移り変わる。
まずは拳を繰り出した直後で前のめりになっているジャックの背を軽く掴んだ後、鳩尾に膝をめり込ませる。
「が……はっ」
鈍い音と共に、ジャックが苦しそうに息を吐き出す。
「まだまだ」
腹を押さえてこちらを睨みつけてくる息子の顔面を殴り飛ばす。
「甘いな」
左拳で殴られたため、右側に倒れていくジャックに、シルヴィアは右手を裏拳気味に回し、持っていた剣の柄を首の後ろ側にくらわす。
ジャックの意識が急速に遠のいていく。ここまで力の差があったのかと、絶望しながら。
「所詮は子供!」
自分の方に倒れてくるジャック。シルヴィアは左足で強く地面を踏みつけ、右足を後ろ側に持って行く。
そして勢いがついたその足で、ジャックを蹴り飛ばした。
固い靴とジャックの頭がぶつかりあい、轟音を発する。
ジャックは力に逆らえずに、そのまま地面に一回も着かずに、数メートルも吹き飛ぶと、太い木の幹に頭から衝突する。
木が震動する。木の葉が何枚か落ちてきて、ジャックの上に落ちる。
ジャックは幹を背に、近づいてくるシルヴィアを霞んだ視界でしか見る事が出来なかった……。
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