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風が吹く。
シルヴィアのオールバックの髪を揺らしながら、それは通過していくと、途端に速度が上昇した。
風は目には見えないが、それに乗っている木の葉や、雑草などのおかげで、動きが見えるようになっているのだが……。
木の葉が急速に曲がり始めた。それはまるで、渦潮にはまってしまった白い花弁のように見える。
ぐるぐると。渦を巻きながら葉は上空へ。
到る所から同じように集められたものが、一つの球体を描いていく。
上空に木の葉で作られた、巨大な球体。
周りに空気の余波を巻き起こし、暴風が吹き荒れる。
雑草が全て斜めに傾き、大木でさえ悲鳴を上げる。
球体がトムの頭上へと移動を始めた。
ゆっくりと動き出したそれは、徐々に周りを覆っている邪魔者を弾き出していく。
中から赤いものが見えてきた。
朱の中身。それは、血。
シルヴィアの目の前にいる男が、血を集めているのだ。
背筋に冷たいものが伝う。あまりの物を見せられ、目を背けられない。大きく見開き、それの一挙一動を見逃さないようにする。
しかし、あんなものがどういった攻撃を仕掛けてくるのだろうか。
シルヴィアの思考中にも、球体は大きくなっていく。
直径二メートル。地上三メートル程の高さにそれは留まった。
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