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宙に飛び上がったシルヴィアを目がけて、球体から射出された無数の赤い線が飛んでくる。
「くそ――ッ!」
空中で無理やり状態を捻り、何本かをやり過ごす。
だが、まだまだ、際限なく死は近づいてくる。
持っていた短剣で撃ち落とし、防御を繰り広げる。
しかし、いきなりガクッと、体の力が急激に失われていく。
全身を駆け巡る気を失いそうな激痛。口の中に溢れてくる鉄臭い味。
吐き気がこみ上げ、視界が滲んでくる。
なにが起こった。
それの原因が分かる前に、無数の攻撃が突き刺さらんと迫ってくる。
シルヴィアは急所となる頭と、心臓の辺りを覆うように、腕を交差させる。
腕に何本もの矢が突き刺さり、食い破ろうと暴れまわる。
「が……あっ……」
足を細い針のように突き刺さり、貫通し、地面へと音を立ててそれは突き刺さる。
さっきとは違う、外面的な痛み。
今度は気を失うような痛みではない。その逆。
それが遠くなるどころか、痛すぎて意識がはっきりしてきている。
喉を通って、赤い液体が口から溢れ出る。
地面へと落ちた彼の体に刺さっていた矢が、その衝撃を受けて、さらに深く刺さる。
「な……にが……?」
シルヴィアは血でべたつく唇を必死に動かし、言葉を絞り出す。
体に力が入らない。体力ならまだまだ余裕があったはずだ。
いきなり、全身に力が入らなくなったその疑問に――。
「毒だ」
――トムが答えを教えた。
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