8878人が本棚に入れています
本棚に追加
「毒……?」
「ああ。それも、お前が使っていたなんとかって竜の毒だ」
そんなものが、いつ自分の体内に侵入したんだ。シルヴィアの頭の中がこんがらがりそうになったが、その理由はすぐに解明される。
「あの時か……!」
あの時。
シルヴィアは赤い球体を剣で切り裂き、自分の頬に付着したのを舐めた。
それは、トムの血だ。
そう、パラドスの猛毒が体の中を駆け巡っていた片腕の青年の。
「その通りだよ。あんた、俺の血を舐めたよな。その時に俺の血から、あんたの体に毒が侵入したんだ。そして、今も注入されているんじゃないか?」
トムはふらふらと体を揺らしながら、しかし絶対に倒れない。
千載一遇のチャンスだ。
ここであいつがアレを出せば、自分が生き延びる可能性が出てくる。
対して、シルヴィアは焦りに焦っていた。トムが言っていた、今も注入されているんじゃないか?という言葉。
その意味が分かっているからだ。
今、全身に突き刺さっているこの矢。トムの血から作られた猛毒入りの赤く鋭い物体。
速く、これを抜かなければ。しかし、焦れば焦るほど手が汗で滑り、上手く抜き取る事が出来ない。
そもそも、今はこれのおかげで、切断された血管を塞いでいる状態なのだ。
もし、これを抜けば、血管を塞いでいた栓がなくなる事になり、次の瞬間には至る所から大出血するだろう。
最初のコメントを投稿しよう!