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だがそれでも抜かなければならない。
そうしなければ、今以上に彼の体に毒が回るのだから。
しかし彼はいつまで経っても抜こうとはしなかった。
代わりに服の内側に手をやり、小さな瓶を取り出す。
透明な液体が入ったそれを見て、トムの顔色が変わる。
自分の運命を左右する一品が取り出されたのだ。
「く……はぁ……」
苦しそうに息を吐くシルヴィアは力を振り絞り、瓶の蓋を開けようと指に力を入れた。
「今だ!」
その瞬間にトムが叫び、赤い球体から触手のようなものを飛び出させる。
球体に繋がったまま、それはシルヴィアが持っていた瓶を絡み取り、術者の方へと戻ってきた。
うねうねとした気持ち悪い物からそれを受け取ったトムは、笑みを浮かべる。
「やっぱり持ってたな、解毒剤を」
全ては想像通り。
猛毒の剣を持っているという事は、偶然にも自分を傷つけてしまった時の事を想像するのが普通だ。
そういう時に必要なのが、元々はシルヴィアが持っていて、今はトムの手にある解毒剤。
最初からトムはこの時を待っていたのだ。
「お前には悪いが、これは俺が飲ましてもらう」
一気に瓶の蓋を開けたトムは、中身を飲み干す。
それから空になった容器を横に捨て。地面に落ちて砕け散った音が聞こえてきた。
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