左団扇

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左団扇

 嘘を真実のように語ることができるというのは、それは聡明であることを指す。逆を言えば、嘘を真実のように語ることができないのであれば、それは聡明でないことを指す。  父は聡明であった。おそらく私は、父のついた嘘に気づいてはいないだろう。  彼は、死の直前、私にこう言った。  何もない空間で暴れるのと、欲しいものがある空間で静かにしているのは、後者の方がはるかに幸せだ。  その意味は曖昧である。死にたくないという想を表にしていのか、それとも私に残したメッセージであるのか。深く思慮して毎日を送っているわけではないのだが、頭から離れたこともない。
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