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「あの後藤さん。私実は世界を滅亡させる力持っているんスよねー」
俺の隣にいる女子高生のミクちゃんはあっけらかんと、そんな物騒なことを何の前触れもなく唐突に言ってのけた。俺はまず「へぇ」と興味ありげに返答する。いつものことだ。世界を滅亡させるとは何だろう、地球が爆発するのか。そんなことを一瞬考えた後、俺は
「ミクちゃんは面白いなぁ」と明らかに適当な言葉を付属させた。自分はまだ若いとはいえ、最近の女子高生の流行など、そういったものには疎いので、流行のギャグだろうと決め付けて深く考えるのをやめた。
バイトとして勤めているコンビニの店内には他の客の姿はなく、ミクちゃんと俺だけが精算レジの前でぼさっとしていた。商品の補充も掃除もやってしまっていて、まさにやることがない状況。
「あー、後藤さん、信じてない顔してるスね」
「信じてるよー、滅亡破壊絶望、どっかーん」
ミクちゃんがむー、と頬を膨らませて怒りを露にすると、俺は薄く笑った。早くバイトの時間終わらないかなぁ、と切に願いながらミクちゃんに別の話題を振ろうといろいろと脳内を探る。すると、ミクちゃんは「もう、わかったスよー」と半ば諦めたような声で言った後、俺の胸板を軽く叩いた。
「証拠見せます。あとで謝ってアイス奢るんスよ?」
「はいはい」
そう言えば昨日録画したバラエティ番組も見ていない。帰ったら、それを見ながら夕食を取ることにしよう。好きなアイドルが出ていたから、しっかり見ないと。あのアイドルの写真集もそのうち買いたいなぁ。
「それでミクちゃん、昨日さー……」
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