純一

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満月の夜だった。春の風が、木の葉を揺らす。緩やかな坂のある、入ったばかりの山道は暗く風の音しかなく、木の葉の揺れる音がこの者を導いてるようだ。 「……嫌な感じだな」 身の細い長身の男。肩まで伸びている髪。この男は珍しく結ってはいなかった。 微かに見える道を、気味悪そうに歩き続ける。暫く歩いていると、竹林が現れた。その先に道はない。そこに迷う間もなく、男は入っていった。 「……ん」 竹林に入った先に人影が見える。男は目を細くした。それと同時に、腰に下ろしてあった二本の内、一本の刀に手を掛ける。 人影は1つではないようだ。1つの影が揺れた。倒れたに等しい。叫び声が微かに耳に届く。 「おいおい何だ、喧嘩か?」 独り言を言いながら男はその場に近付いた。影が少しずつハッキリとしてきた。 彼方の方も気付いたのか叫んぶ。 「誰だ!!」 「おや」 死体に跨って胸の辺りに刀を刺していた。幾つかの竹赤い点々がある事から、血が飛び散ったのが分かる。 死体に跨っていたのは、腰の近くまで伸びた髪を持つ、女のようだった。 「……女?」 「俺は男だ!」 そう言いながら彼は立った。
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