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出版という形で、兄の手元を離れてしまった本。
僕には、世に出してしまうということの責任は、よくわからない。
だけど、時々、僕に「また本の中で人を殺してしまったよ」と自嘲気味に笑っていたり、電話口で口論していたり、押し殺したような声で「努力します」と返事していたり、真っ暗な部屋の中で一人、朝が来る頃まで腕を組んで何か考え込んでいたりする兄を見ていれば何となくそれが酷く苦しいことらしいという事は想像がついた。それはあくまで僕の想像でしかないけれど。
兄は、自分の本に並ぶ活字たちを、そして自分を、砂浜にあるもの全てを灼き焦がす日の光で、灼いて、灼いて、灼いて、自分に罰を与えているのかもしれない。
僕にはそう思えた。
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