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「急に身長が伸びたからね。
これじゃちょっと着れないね」
最終宣告を受けて愕然とする。
せっかく樹に見てもらいたかったのに。
沈んだ私を見て母は明るく手を叩く。
「じゃあ、今から買いに行こうか」
「え?」
「今なら帯もセットでいいものが売ってるでしょ。デパートに行こう、早く支度して」
積極的な母に驚いて思わず聞いてしまう。
「いいの?」
「だってすごくがっかりしてるから。着たいんでしょ?
デート?」
「え!?あの…」
からかう母に動揺する。
こんなの久しぶりだ。
「いいのよ。美桜が頼ってくれるのって久しぶりだから」
お互い同じことを考えていた。
嬉しそうな母の顔を見て、今まで手を煩わせないことだけを考えていたけれど、時には甘えた方がいいのかもしれない。
それを母は望んでいたのかもしれないと少しだけ思った。
だけどこんな風に考えられるのは心に余裕が生まれたから。
樹が切羽詰まっていた気持ちをほぐしてくれたから、見えないものが見えてくる。
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