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そのまま身支度を整えて近くのデパートに向かった。
幼いころ家族で買い物によく来ていた場所だ。
季節ということもあって、浴衣は特設の売り場があり、色とりどりのものが並べられていた。
二人で選び、前のものより少し大人っぽい、紺地に鮮やかな蝶が控えめに舞うものにした。
簡単な試着をしている間、カーテンの外側で母は熱心に着付けのコツを店員に聞く声がした。
カーテンを開いて外に出て、自分の姿を鏡に映す。
「すごくお似合いですよ」
店員にお決まりの言葉を投げかけられるが、浴衣の自分なんて見慣れていなくて本当に似合っているのか良く分からない。
だけど店員の言葉を嬉しそうに受け止め、鏡越しに母が満足げな微笑みを浮かべ、誉める。
「似合うわ、美桜。とてもかわいい」
店員よりも信用できる母の見立てに安心して、これに決めた。
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