息苦しい日常

10/33
前へ
/261ページ
次へ
「い~な~。私も早く取り返したいよ~」  床に膝をつき、机に突っ伏す。狭い机の面積が余計に小さくなる。 なんとも言えずにいると、そんな答えなど待っていなかったのか、麻耶は顔を上げるといきなり話題を変えてきた。 「ねぇ、今朱音も誘ったんだけど、美桜も一緒にライブハウス行かない?」 「ライブ?」 「知り合った男がバンドやってて、今度イベントに出るんだってさ」 すかさず横の朱音が足りなかった説明を追加する。 朱音はどちらかというと頭がよくて女らしい。長い髪を毎日丁寧にアレンジしてくるのには感心する。 一見おとなしそうに見えるが、突っ走る麻耶を操縦、フォローしているのは彼女だ。 「そうなの!ネットで知り合った人なんだけど、意外に近くに住んでてさ、明日こっちのライブハウスに来るっていうから、みんなで行こうよ」 笑顔で誘う麻耶だけど、違うところが気になった。 「ネットで…ってもしかして出会い系?」 「ばっか!違うよ。音楽系のブログのサイト!」 心外だというように反論する。 好奇心の強い彼女のことだ。もしかしてと、少し思ってしまった。
/261ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48007人が本棚に入れています
本棚に追加