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「い~な~。私も早く取り返したいよ~」
床に膝をつき、机に突っ伏す。狭い机の面積が余計に小さくなる。
なんとも言えずにいると、そんな答えなど待っていなかったのか、麻耶は顔を上げるといきなり話題を変えてきた。
「ねぇ、今朱音も誘ったんだけど、美桜も一緒にライブハウス行かない?」
「ライブ?」
「知り合った男がバンドやってて、今度イベントに出るんだってさ」
すかさず横の朱音が足りなかった説明を追加する。
朱音はどちらかというと頭がよくて女らしい。長い髪を毎日丁寧にアレンジしてくるのには感心する。
一見おとなしそうに見えるが、突っ走る麻耶を操縦、フォローしているのは彼女だ。
「そうなの!ネットで知り合った人なんだけど、意外に近くに住んでてさ、明日こっちのライブハウスに来るっていうから、みんなで行こうよ」
笑顔で誘う麻耶だけど、違うところが気になった。
「ネットで…ってもしかして出会い系?」
「ばっか!違うよ。音楽系のブログのサイト!」
心外だというように反論する。
好奇心の強い彼女のことだ。もしかしてと、少し思ってしまった。
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