48007人が本棚に入れています
本棚に追加
途端に今朝のことを思い出す。「いってきます」に誰も答えてはくれなかった。
そんなこといつまでも気にするのはおかしいことだ。
でも、小さい時から、挨拶だけはちゃんとしなさいと教え込んだのは母だった。
自分は出来ていないくせに。
そう思うといつもよりも苛立つ。
「美桜はさ、本当に真面目だよね。親なんてどうだっていいじゃん。なにがそんなに怖いの?」
バカにしたような呆れたような麻耶にムカッとする。
「怖くなんて・・・」
「違うの?」
麻耶は楽天家だ。
言葉通りに受け取るし、本音を悪意なくさらけ出す。
「違う…。いいよ、行く」
気づくとそう答えていた。
麻耶に対する苛つきよりも、自分へのムカツキが勝った。
「本当に?」
「うん。久しぶりに遊びたいし」
すると目を丸くして、素直に喜ぶ。
最初のコメントを投稿しよう!