息苦しい日常

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途端に今朝のことを思い出す。「いってきます」に誰も答えてはくれなかった。 そんなこといつまでも気にするのはおかしいことだ。 でも、小さい時から、挨拶だけはちゃんとしなさいと教え込んだのは母だった。 自分は出来ていないくせに。 そう思うといつもよりも苛立つ。 「美桜はさ、本当に真面目だよね。親なんてどうだっていいじゃん。なにがそんなに怖いの?」  バカにしたような呆れたような麻耶にムカッとする。 「怖くなんて・・・」 「違うの?」 麻耶は楽天家だ。 言葉通りに受け取るし、本音を悪意なくさらけ出す。 「違う…。いいよ、行く」 気づくとそう答えていた。 麻耶に対する苛つきよりも、自分へのムカツキが勝った。 「本当に?」 「うん。久しぶりに遊びたいし」 すると目を丸くして、素直に喜ぶ。
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