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「お母さん、それじゃあいってきまーす」
「おじゃましました」
麻耶のお母さんは挨拶をすると、見送りにまた玄関に顔を出した。
少しふくよかで気のいい感じはホームドラマに出てくる典型的な母親像を連想させられる人だ。
「アンタまたそんな派手な格好して!今日は早く帰ってきなさいよ!朝帰りなんかしたらまた携帯取り上げるからね!」
「わかってるよ」
麻耶は、うっとおしそうに玄関を出た。それについて行こうとすると呼び止められる。
「美桜ちゃん、あの子よろしくね。美桜ちゃんならしっかりしてるから安心だわ」
怒りながらも心配そうなお母さんに私は曖昧に笑い返した。
開始は7時からだったが、少し早めに朱音と合流して3人で地元では有名なライブハウスに向かった。
時間が早いのは、始まる前に楽屋で誘ってくれたボーカルに麻耶が会うためだ。
麻耶はブログにアップされていた彼の写真を見て格好いいと言っていたが、私と朱音はにわかには信じていなかった。
それというのも、麻耶の男の趣味は全く私たちとは合わないからだ。
顔の造作がどうこうよりも、髪が腰まで伸び、無精ヒゲを生やした男だったり、赤髪に染め、耳たぶが千切れるんじゃないかというくらいの数のピアスをしていたりと、とにかく外見が個性的で近寄りがたい人ばかり選んでくる。
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