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「ねぇ、今度はどんな奴だと思う?バンドのボーカルってことは今まで以上かもよ」
朱音がおもしろそうに耳打ちをしてくる。
浮かれる麻耶の背中を見ながら、きっと好青年ではないだろうな。と予想はついた。
そしてその予想は楽屋のドアを開けた瞬間に的中したと悟った。
古くて落書きだらけの壁の通路を進み、楽屋である小さな部屋の中にはバンドのメンバーと、スタッフや友達らしき男の子、それに混じって取り巻きのような女の子たちがごちゃごちゃとひしめき合っていた。
その中を強気で潜り抜け、麻耶はお目当てのボーカルらしき人に近づく。
その彼の姿にギョッとした。
頭をスキンヘッドにそり上げ、耳と鼻、よく見れば舌にもピアス。
タンクトップから覗く腕にはタトゥーが入っている。
はっきり言って、見た目がかなり怖い。
やっぱり…。と朱音とドアの手前で顔を見合わせる。
麻耶は上機嫌で自己紹介やら会いたかったやらとアピールしていた。
周りの女の子たちのキツい視線にも気付いていないのだろうか、いや、彼女のことだからあえて無視をしているのかもしれない。
こちらの方がヒヤヒヤする。
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