息苦しい日常

20/33
前へ
/261ページ
次へ
先ほどもらった…いや、ちゃんとお金を出して買ったチケットにはドリンク代も含まれているというので、カウンターにウーロン茶をもらいに行くことにした。  私が先に店員から手渡され、グラスを手に持ち、突っ立って二人を待っていると、横にいた人と身体がぶつかり、よろけてしまう。 「あっ」 パシャっと跳ねた水滴がちょうど通りかかった男の人の手にかかった。 「す、すみません!」 「あーいいよ、いいよ」   男は濡れた指先を振ると、そのまま自分の口元にもっていきそれをペロリと舐めた。 「気にしないで」   そう聞こえた時にはもう人の波の中に消えていた。 私はもう一度、届かないと分かっているのに「ごめんなさい」と小さく呟いた。
/261ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48007人が本棚に入れています
本棚に追加