息苦しい日常

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重たいドアを開けると夜風が気持ちよく顔に吹き付ける。 人の熱気と空気の薄さにやられてしまったようだ。 軽い貧血で目眩がする。 「本当に体力ないな私」 一人言で自分を責めつつ、壁にもたれるようにしてそのまま地面にしゃがみ込む。 周りには何人かタバコを吸ったり電話をしたりする人がいた。同じようにライブに来た客だろう。 頭をもたげても誰も気にする様子がないので安心して一息ついた。 大勢の人の気配の中一人になるのは好きだ。 独りではないのに独りでいる感覚。その矛盾が落ち着く。 なのに、その空間を破るようにしばらくすると横に立つ人影に気づいた。 「どうしたの?酔った?」 伏せていた顔を反射的に上げる。 見上げると帽子を被った男が一人。暗くて顔がよく見えないが明らかに私を見ている。 心配そうに「大丈夫?」とまた聞かれた。 突然話し掛けられて戸惑う。なんだか警戒してしまう。
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