息苦しい日常

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「え、あ…大丈夫です。別に、酔ってないし」 すぐに目を反らす。なんともないから構わず立ち去って欲しかった。 なのに男は続ける。 「酔っ払いほどそういうこと言うんだよね。倒れてからじゃ迷惑なんだよ?」 人を酔っ払いと決めつけた物言いで彼はそのまま私の目線の高さまで腰を降ろした。 顔を覗き込んでくる。 青いのか赤いのか確認したいらしい。 だけどこっちはシラフ。 いきなり顔を近づけられ、不快に思う。 「ちょっと!酔ってないって言ってるじゃないですか! だいたい、私は高校生!お酒なんて飲みません」 シラフらしくちゃんとした態度に男は驚いて少しのけぞる。 その時ライトに照らされて、初めてはっきりと姿を確認した。 黒いニット帽と、Tシャツにジーンズ。 ごつめのシルバーのアクセサリーを首と腕とベルトに付けて動くたびにジャラジャラと音をさせていた。 口をわずかに開けて驚いた表情のまま固まっているが、よく見れば真っ黒で大きな瞳が印象的な、意外に整った顔をしている。
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