息苦しい日常

27/33
前へ
/261ページ
次へ
そういえば、あの時の両親の慌てぶりはすごかった。 お互いに目を離したことを怒ったり、謝ったり。 私も怒られたり謝られたり。 だけど夜だったのにも関わらず、病院に連れて行かれたスピードはものすごく速かった。 幸い、一時的なものだったので、今では笑い話だけれど。 「あはは!そりゃあ早いデビューでやられたな!」 彼は顔をくしゃくしゃにして思いきり笑い飛ばす。 そんなに自分の話がおもしろかったのかと勘違いしそうになるが、絶対この人が笑い上戸なのだろう。 だけど不思議と話しやすい。 初対面なのに、さっきまで警戒心バリバリだったのに。 「あ、じゃあどうしたの?本当に気分悪かった?」 また心配顔に戻る。 コロコロと表情を変える人だ。 「うん、しいて言えば人の多さと大きな音に酔ってたのかも。私ライブハウス向いてないみたい」 「あはは、ホントだ」 「でも今はもう平気。あなたのおかげで気が紛れたみたい」 「役に立って良かったよ」   笑顔で答えてくれる。 話しやすいのはこの親しみ易さと、他人を本気で心配してくれる親切さなのかもしれない。
/261ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48007人が本棚に入れています
本棚に追加