息苦しい日常

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「あの、ごめんなさい勘違いさせて。スタッフの人ですか?」 ついでに少し不信感を持ってしまったことも謝りたかった。 だけど彼は予想外に驚く。 「スタッフ!?いや俺は全然。ただの客。知り合いが出てるから来ただけだよ」 私の勘違いに笑うけれど、こちらは笑えない。 「えっ、じゃあなんで…」 「たまたま後ろの方にドリンク取りに来たらフラフラと外に出ていく子がいたから心配で声かけたんだ」 なんでもないことのように言うけれど、心底驚いた。 ここのスタッフならまだしも、顔見知りでもない人間のほんの少しの行動をちゃんと見つけて、心配し声までかけてくれるなんて。 しかもこの人の場合下心などまるでない100%の親切だと伺える。 そんな人とこんな場所で出会えるなんて驚きだ。 驚きすぎて声が漏れる。 「すっごい、お人よしですねー」 小声で呟いてしまってからハッとする。これではあまりに失礼だ。 「ご、ごめ…!」 「そうなんだよー。よく言われる。むしろおせっかいだってね」
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