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背にした会場からは、先ほどのバンドの演奏が聞こえる。
激しい曲の次は、一転して落ち着いた曲が始まった。
プロのもののように上手い。
中で聴いていたら良かったと少し後悔したが、ここでこの人といるのも悪くはない。
「君おもしろいね、えっと名前は?」
彼はごく自然に尋ねてきたので私もごく自然に答える。
「ミオ」
「ミオね。どういう字?」
「字?漢字? 美しい桜って書いて美桜」
漢字まで求められるのは初めてのことなので驚いた。
だけど彼が「へぇ、きれいだね」と感想を言うので私は素直に嬉しいと思った。
「あなたは?それと、私と同じように見えるけどたぶん年上…ですよね」
今更ながらに取ってつけたような敬語にする。
だけど彼は何も気にしていなかったようだ。
「えー、高校生にみえる?嬉しいような悲しいような。
俺はハタチだよ。
じゃあ、美桜ちゃんには特別に作ったばかりの俺の名刺あげちゃう。どうぞ~」
そう言うとおもむろにジーンズの後ろポケットから財布を取り出すと、その中から一枚のカードをこちらに差し出した。
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