動き出す心

4/21
前へ
/261ページ
次へ
部活にも入っていない私は授業が終わると麻耶も朱音にも止められはせず、予定通りにすぐに正門を飛び出した。 帰宅ラッシュでもない時間帯のため、電車は比較的空いており、席に座る。 バックから鏡を取り出して、少し乱れた前髪を直したり、下がってしまったまつ毛にビューラーをかけた。   普段はただ通過するだけの駅で降車する。馴れない景色が広がってそれだけで新鮮だ。 市立図書館の場所は市民であれば有名なので知っていて、駅からの道も大体分かった。 数分歩くと広い土地に大きな建物が現れる。 木や花が意図的に植え付けられ、緑が多く庭園のようだった。 ここに来たのは小学生のとき以来かもしれない。 文学にはあまり興味のない私は寄り付くこともしなかった。 制服のスカートのポケットから、もらった名刺を取り出してもう一度確認する。 樹という名の彼はどこにいるのだろう? 手に持ちながら正面玄関からロビーに入ると、ホワイトボードにお知らせが書かれていた。 「あ、ほのぼのえほん教室…」
/261ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48007人が本棚に入れています
本棚に追加