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歳をサバ読んでいたのかと思われたのだろうか、少し唇の端がヒクつく。
でも
「いらっしゃい」
あの夜と全く印象の違う、白いポロシャツにキャラクターの絵が入ったかわいいエプロンなんか着けちゃってるくせに、窓から注ぐ太陽の健康的な日差しを浴びて明るく笑う姿はあの日と変わらない。
むしろ今の方が彼の性格に似合う隙のない好青年に見える。
「美桜ちゃんも入りなよ」
なんでもないことのように手招きをされ、子供たちの輪の中に混ざるように促される。
「ねー、樹おにいちゃん」
「だれ、だれー?」
子供たちの好奇心の視線の中、少し抵抗を感じながらも断ることが出来ずに意を決し、靴を脱いで一歩踏み出した。
靴下ごしにも感じるピンク色のカーペットの柔らかい感触。
それを見て樹は満足げに微笑む。私はそれに釘付けになる。
「さぁ、みんな美桜ちゃんも仲間に入れてあげてね。
次のご本は“くまさんのおつかい”でーす」
子供たちは「はーい」とか「知ってるー」とか一瞬声を上げたが、樹が本を読み出すとすぐにおとなしくなり、夢中になり始める。
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