48007人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちょっとびっくりした。まさか本当に、こんなに早くに来てくれるなんて」
「…気が、向いたから」
恥ずかしくてわざとぶっきらぼうに答える。
これでは会いたかったというのがバレバレだ。
「そっか。その制服、西高だもんね。ここから近いし寄ってくれたんだ」
樹は一人で納得する。
もうその理由でいいので、黙っておいた。
絵本教室が終わると子供たちはそれぞれに母親と帰宅したり、まだまだ読み足りないのか、児童書のコーナーで本を選ぶ子もいた。
樹は次の仕事である、返却された書籍を元の本棚に戻すとという作業に移ったが、折角来てくれたのだからと相手をしてくれた。
「それにしても絵本の読み聞かせなんてすごいね」
「この図書館の職員の中で、俺が一番下っ端なんだ。
子供たちをまとめるのって結構大変だから押し付けられて、いつの間にか俺が専任になっちゃったんだよね」
愚痴のわりに笑顔で、文句のようには聞こえない。
きっと大変だけど自身も楽しいのだろう。
子供と別れ際じゃれ合っていたし、よく懐かれていた。
「樹…さんは司書ってやつ?」
最初のコメントを投稿しよう!