動き出す心

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「ちょっとびっくりした。まさか本当に、こんなに早くに来てくれるなんて」 「…気が、向いたから」 恥ずかしくてわざとぶっきらぼうに答える。 これでは会いたかったというのがバレバレだ。 「そっか。その制服、西高だもんね。ここから近いし寄ってくれたんだ」 樹は一人で納得する。 もうその理由でいいので、黙っておいた。 絵本教室が終わると子供たちはそれぞれに母親と帰宅したり、まだまだ読み足りないのか、児童書のコーナーで本を選ぶ子もいた。 樹は次の仕事である、返却された書籍を元の本棚に戻すとという作業に移ったが、折角来てくれたのだからと相手をしてくれた。 「それにしても絵本の読み聞かせなんてすごいね」 「この図書館の職員の中で、俺が一番下っ端なんだ。 子供たちをまとめるのって結構大変だから押し付けられて、いつの間にか俺が専任になっちゃったんだよね」   愚痴のわりに笑顔で、文句のようには聞こえない。 きっと大変だけど自身も楽しいのだろう。 子供と別れ際じゃれ合っていたし、よく懐かれていた。 「樹…さんは司書ってやつ?」
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