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「樹でいいよ。子供もそう呼ぶ奴いるし。
俺はまだ司書じゃないんだよ。今通信制の大学で資格取るために勉強中のただのバイト」
さりげなく呼び方を訂正される。司書という職業について詳しく知らない私は曖昧に「そうなんだ」と納得する。
「本が好きなんだね。実は私、図書館なんて何年振りか分からないくらいなんだ」
白状すると、顔をくしゃっとして笑う。
「意外に楽しい所だよ。それにそういう人に興味を持ってもらいたいから働いてるっていうのもあるんだ。活字は嫌い?」
「う~ん、ちょっと苦手。最近は携帯小説なら読んだけど」
「へー。俺、携帯小説って読んだことないや。おもしろい?」
樹は話しながらもどんどん移動をして本を的確な場所に戻していく。
元にあった場所を熟知しているようだった。カートに積まれていた量があっという間に減っていく。
「まぁね。暇つぶしに。恋愛ものとかわかりやすいし」
「ふ~ん、なら今度オススメ教えてよ」
一般的な、文学的な小説が好きな人ほど携帯小説というジャンルを嫌うように思っていたが、彼はそうではないらしい。
私だって大好きというわけではないし、多くの作品を知っているわけではないのだが、そう言われたらおもしろそうなものをいくつか選んで教えてあげたいと思った。
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