動き出す心

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「ま、読んでみたら?おもしろいから。あと1時間半、暇つぶしにもなるし」 「1時間半?」 不可解な単語にさらに首をかしげると、樹は軽く私の頭を触れた。 「今日は5時に上がれるから、少し待っててくれると嬉しい」 「!」 ニコッと微笑まれると、逆らうことなんて出来ない。 いや、きっと彼がどんなに無表情であろうとも、私はきっと待つだろう。 忠犬にでもなった気分だ。大好きなご主人ために待っている。 (あれ…?) 自分の思考に疑問を持つ。 私は今、無意識に何を思った? 受付カウンターの方から、メガネをかけた中年の女性が 「谷岡くん」 と呼んだので樹は返事をしてそちらに向かった。 その後ろ姿をぼうっと見送った。
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