動き出す心

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「ダーメ。もう図書館は閉館の時刻ですので入れません」 あっさり断られたのでそのまま引き下がる。 正しいのはそちらなので、ダダをこねても仕方ない。 「じゃあ、また今日みたくここに来てもいい?」 思ったよりも弱々しい声になってしまった。樹が意外そうな顔をする。 「いいに決まってるじゃん。なんならまた絵本教室に参加してもいいよ」 笑いながらもちろん園児側で、と付け加える。 その冗談を受けながらも、私はいい反応を返せずに、苦笑いのまま自分の気持ちを出してしまう。 「うん、もうすぐ夏休みなの。予定ないから暇だしそれに…家に、居たくないから」 ボソッと零れ落ちた本音。 その真剣な響きを樹は敏感に感じ取る。 「家に?どうして?」 ハッキリ聞かれて我に返る。 なぜ私はこんなことを口に出したのだろう。 こんな醜い感情を、他人には知られたくないのに。 「ううん、なんでもない!こっちの方が涼しいし快適だもん。あ、そうだ、待っている間に少し本進んだよ。なんかジュリエットってワガママだよね」 誤魔化すように一気にまくしたてる。 「えぇ?ワガママってどうして」 変な感想に樹は笑う。
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