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話が逸れたことにホッとしながら、感じたことをそのまま話す。
「だって、自分が恋した相手に名前を変えて、捨ててください、っていきなり迫るなんて怖いじゃない」
また樹は笑った。
「それならロミオだって、いきなりジュリエットの屋敷に侵入してるわけだし、怖いね」
「あぁ、確かに!」
世界の名作をこんな風にフザケた感想で語り合うなんて、それこそシェイクスピアに怒られそうだが、まぁ楽しいからそれでもいい。
「でもそれが恋の激しさを表わしているんだよ。知ってる?2人は15歳と14歳なんだ。若いからこそ一途で激しいんだって。
なにかの本でロミオとジュリエットがもう少し年齢が上だったら最後の悲劇は訪れなかっただろうって書いてあるのを見たことがある」
「へー14歳…。若い」
たった三つ下だけれど、随分昔のことのように感じる。
「自分だって十分若いよ」
「でも私にはそんな情熱があるとは思えないな。ねぇ、最後の悲劇ってなんだっけ?」
うろ覚えのため、ちゃんとしたものが思い出せないので聞く。
「そっか、知らないのか。じゃあ黙ってる」
「いいよ、私推理ドラマで先に犯人が分かっていても気にしないタイプなの。だから教えて?」
すると樹は少し驚くと、声を押し殺すように笑い出した。
「本当、おもしろいね。
美桜と話していると楽しいよ。
初対面で、ものすごく趣味や考え方が合うってわけじゃないみたいなのに、こんなに気を使わないで会話が弾む人って俺初めてだよ。波長が合うのかな」
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